堀川 ゆい子

「観察」が好きだった私が、リハビリテーション科医を選んだわけ
私は、幼少期から引っ込み思案で、コミュニケーションは得意な方ではありませんでした。姉の後ろをついていき、周囲の出来事をこっそりと観察するタイプでした。
しかし、この「観察癖」は、医師としての私の原点となり、リハビリテーション科医に必要な洞察力につながったと、今では思えるようになりました。
医学部6年生でそろそろ進路について考え始めようした頃、どの専門領域も奥が深く魅力的でしたが、心から情熱を燃やせる場所が曖昧なまま、学生時代を過ごしていまし
た。
転機は、たまたま参加したボランティア活動でした。地域の高齢者が集う体操教室に顔を出した際、特別な治療介入をしたわけでもない私を見て、「あなたがいると元気をもらえるよ」と、おじいちゃんおばあちゃんが笑ってくれたのです。人が嬉しそうにしたり、元気になったり、誰かの役に立てたりすることが、これほどまでに自分自身の喜びとなり、情熱の源になるのだと、初めて知った瞬間でした。その頃にちょうど、大学でリハビリテーション科の授業がありました。病気を診断し、薬物で治癒を試みる従来の医学の枠組みに対し、リハビリテーション医学は、その先にある「人間」と「生活」に着目し、機能障害を克服するという患者さんの人生に寄り添うことのできる学問であると学びました。リハビリテーション科なら、その人らしい生き生きとした暮らしを創ることに貢献できるのではないかと思ったのが、リハビリテーション科に興味を持ったきっかけでした。

私の進路が決まった言葉
「リハビリテーション科といえば慶應」となんとなく知っていたので、慶應とは無縁の私でしたが、勇気を出して慶應リハビリテーション科医局の説明会に参加させていただきました。そこで、医局の先生がおっしゃった言葉が印象に残っています。「他科が薬を処方し、病態を是正しようとするのに対し、リハビリテーション科は、患者の生活に着目し、問題を解決する。そして、我々は人を処方する。患者さん自身の努力、セラピストの技術、ご家族のサポートといった、人との関わりこそが、我々の治療の要です。」この言葉を聞いた瞬間、「やはり魅力的な科である、このアプローチこそ、他者の喜びを自らの情熱とする私に最も向いている」と感じました。患者さんが「日常のどの瞬間に、どのような困難を抱えているか」を考える際、他者との会話が得意とはいえない私だからこそ、相手の環境や状況を深く観察し、推測するというスキルが磨かれました。これは、退院後の生活環境、ご家族との連携、そして趣味や社会的役割といった、リハビリテーションの予後を左右する「生活」のデータを把握する上で、大切なスキルとなっていると実感しています。
「その人らしさ」を取り戻す、私たちの仕事
リハビリテーション科医として働く喜びは、疾患の単なる機能障害に留まらず、患者さんの「生活」全体に深く踏み込み、問題を総合的に解決できる点にあります。実際、私たちは、さまざまな機能障害を持つ患者さんに対し、疾病に応じた緻密な訓練に加え、日常生活に直結する指導を行います。機能障害が軽減され、患者さんがより良い生活を実現した姿が見られること。そして、その過程で患者さんのご家族や介護者が心から喜んでいる姿を見ることは、何よりも励みになります。
私を育ててくれている環境

慶應リハビリテーション科に私が強く惹かれた理由の一つが、最適化された研修環境です。関連施設が非常に多く、各施設に経験豊富な指導医が多数在籍しているため、急性期から慢性期、専門疾患に至るまで、多角的な症例を経験できます。慶應リハビリテーション科に入局してからの私のキャリアは、杏林大学病院(宇宙医学の研究や脳卒中センターをはじめ、多様な専門分野を有しており、非常に魅力的な病院です)、埼玉病院(大規模な急性期病院ですが、common disease〜rare diseaseまで様々な疾患を経験できます)、村山医療センター(回復期リハビリテーション病院で、脊髄損傷専
門病棟があります)、そして慶應義塾大学病院(ニューロリハビリテーションや、がんリハビリテーションを含む高度で専門的なリハビリテーションを学ぶことができます)と、複数の充実した環境で研鑽を積ませていただきました。どの施設でも、指導医の先生方は熱心で、臨床の知恵を惜しみなく注いでくださいました。
リハビリテーション科の知識がほとんどなかった私が、入局後、毎日が新しいことの連続でありながらも、知識を習得し、成長を実感できたのは、この環境のおかげです。どの関連施設でも、指導医の先生方は親身になって熱心に指導してくださり、私の成長を全面的にサポートしてくださいました。大学ならではの専修医プログラムの体系化された教育体制と学年の近い先輩リハビリテーション科医が多数そばにいてくださる環境のおかげで安心して疑問を解決していけます。
支え合う文化で子育てとの両立を
リハビリテーション科医としてのキャリアを歩み始めてから、私は妊娠、出産、そして産休・育休というライフイベントを経験しました。育休明け、復帰への希望と同時に、慣らし保育や頻発する子どもの発熱など「思うように働けない」現実に直面し、申し訳ない気持ちでいっぱいになることも多々ありました。急にお休みをいただくことが続いたときには、このままこの働き方を継続して良いのか悩みました。そんな時に先輩医師から、「大丈夫だよ。他の先生でしっかりフォローするから、お子さんの大切なイベントはお母さんが行くべきだよ!」と温かい言葉をかけていただいたり、後輩から「なんとかなるので大丈夫です!お子さんを1番に考えてくださいね!」とありがたい言葉をかけてくれたりし、心が救われました。
育児とキャリアを両立してきた先輩方が多くいる慶應リハビリテーション科では、育児による急な休みに対する理解と、それをフォローし合う体制が、すでに文化として根付いています。この心強いお言葉と、医局全体が醸し出す明るく垣根のない雰囲気のおかげで、私は大きなやり甲斐を感じながらも安心して仕事に邁進できています。
未来の仲間へ
「人との関わり」が好きな方。
専門的な経験を深く積みたい方。
先輩や同僚と垣根なく学び、成長したい方。
育児やライフイベントと仕事を両立させたい方。
慶應リハビリテーション科は、それらを叶えられる場所だと、私は実感しています。
まずは、気軽に医局の雰囲気を感じに、見学にいらっしゃいませんか。引っ込み思案だった私が、今、患者さんや医局の仲間たちと日々どのように関わり、働いているのか、ぜひ直接お話しさせてください。みなさんとお会いできることを、楽しみにしています。
堀川 ゆい子
2021年度入局
2021年 杏林大学病院
2022年 国立病院機構埼玉病院
2023年 国立病院機構村山医療センター
2025年 慶應義塾大学病院
いつも笑顔で患者さんのみならず、周囲のスタッフも元気づけてくれる太陽のような
存在。一児の母として育児と仕事の両立に奮闘する姿を、スタッフ一同応援していま
す!

